「AI分野では多くの出来事が進行している」と言っても、それは控えめな表現にすぎない。業界とのつながりが薄い人々がこの潜在力を軽視するのは、自らの危険を招く行為だ。AI 技術は、人間の能力の優位性について私たちが知っているほぼすべてを覆すことになる。
私はLess Wrong(レス・ロング)に掲載された長編エッセイを、今なお咀嚼しているところだ。
このエッセイの著者はハンドルネームを「エル・ルドルフ・エル」(以下「エル」)と名乗る人物だ。エルは2025年から2029年ごろの生活を驚くほど具体的に描写しており、その予測には曖昧さがない。
以下、エルが示す来たるべきAI時代を順に見ていこう。
ビジネスの帰結――主要プレイヤー
コンシューマー市場で競合する企業としてOpenAIに競争優位性はあるのか。エルの答えは次のとおりである。
「同社は消費者への依存度が高く、自社APIの上で構築された製品と競合する“プロダクト企業”へ移行しつつあるため、とりわけ脆弱です」。
ではOpenAIは何を狙うのか。
「社内および投資家向け(ただし公表せず)の戦略は、ドロップイン型の自律エージェントAIワーカーを世界で最初に実現し、その技術的リードを武器にオープンソース勢を凌駕し、全世界GDPの10%超に相当する収益を得ることです。数百億ドル(約数兆円)を調達し、既存製品でも数十億ドル(約数千億円)を稼いでいるOpenAIは、十分に資金を投じられます」。
Anthropicは「モデル品質において珠玉」「技術者のメッカ」と称賛され、xAIとDeepSeekがオープンソース陣営の旗手になるとエルは見る。
勝者と敗者についての要約は以下のようなものだ。
「投資家が見たいのは『真の AGI』です。グーグルDeepMindの数学研究やxAIのエンジニアリングはクールですが、OpenAIとLLMはそうではありません。アマゾンのAWSと実店舗はクールですが、グーグル検索とフェイスブックはそうではありません」。
そして「シャベルを売る」インフラ提供者として、エヌビディアの優位は続くとエルは指摘する。ここ数週間株価は軟調だが、数年後の姿はまだ見通せない。