気候変動対策が「構想」から「実行」へと移るなか、世界最大級のクライメートテック・カンファレンス「Wall Street Green Summit 2025」がニューヨークで開催された。ESG投資の進化、カーボン市場の制度化、AIを活用した脱炭素技術の実装など、脱炭素の現場は転換期を迎えている。
本稿では、現地で得た知見とNet Zero Insightsの最新レポートをもとに、世界の潮流と日本企業にとっての示唆を探る。
世界の脱炭素プレイヤーが集結
クライメートテック領域における国際会議「Wall Street Green Summit（WSGS）」が3月、ニューヨークで開かれた。2002年に米エネルギー経済の専門家ピーター・フサロ氏が創設した本サミットは、今年で24回目。クリーンエネルギー、カーボンクレジット、ESG投資、そしてAIの応用まで、脱炭素を軸に技術・資本・制度の交差点を幅広く扱う構成となった。
二日間にわたって、会場には投資ファンド、気候テック企業、政策立案者、大手企業のサステナビリティ担当者らが集結。テーマは「Climate Tech Investing & Reporting」「Carbon Markets and Finance」「Greening Clean Transportation」など。近年加速する気候関連開示の義務化、カーボンクレジット市場の制度整備、民間による再エネインフラ投資の拡大など、脱炭素に向けた産業・金融両面の動きが活発に議論された。
AIとカーボン市場、実装段階へ
WSGS2025では、複数のセッションで「技術の社会実装」が主要テーマとして取り上げられた。セッション「How AI is Transforming ClimateTech」では、Improvability AIのTee Ganbold氏が登壇し、電力需給の最適化や排出量トラッキング、クレジットのリアルタイム評価といった生成AIやモデリング技術の応用事例を紹介した。
金融面では、「Pricing Climate Risk into Financial Markets」のセッションで、物理的リスクと移行リスクを織り込むための評価モデルや、ESG債の新たな格付け枠組みが紹介された。気候リスクが資本市場における価格要因として明確に位置付けられ始めた兆しといえる。
