前代未聞である。就任100日足らずでの大激突。我々は歴史上初めて、世界一の権力者と世界一の富豪の衝突を「リアルタイム」で目撃している。2025年5月23日発売のForbes JAPAN7月号では、「ビリオネアランキング2025 マスク、トランプの恩恵を受けたのは誰か？」を特集。これを読めば、世界を動かす人たちの資産額と富の源泉、その影響が及ぶ範囲のすべてがわかる。
1987年以来、フォーブスは世界のビリオネア（資産額10億ドル以上の富豪）を記録し続けてきた。初年度は140人だったその数が、1000人を超えるまでには20年も要した。2000人に到達したのが2017年。そして25年現在、3000人を超えるビリオネアが存在する。
今年のランキングは、3028人の起業家や投資家、相続人から構成されており、昨年比247人多い。ここでは、「世界のビリオネアランキング 2025年」で上位に入った15人を紹介しよう。
世界のビリオネアランキング2025
1：純資産 2：肩書き 3：国籍
1｜イーロン・マスク
1：3420億ドル 2：テスラ、スペースX共同創業者 3：米国
イーロン・マスクは2024年5月、LVMHのベルナール・アルノーから世界一の富豪の座を奪還した。当時、非公開の投資会社がマスクの創業した人工知能(AI)開発企業「xAI」を240億ドルと評価したためである。そして同年12月には、xAIの評価額が500億ドルに倍増。彼の宇宙開発企業「SpaceX(スペースX)」が3500億ドルに達した後、史上初の4000億ドルの資産を所有する富豪となった。CEOを務めるEVメーカー「テスラ」の株価も同月に史上最高値を記録したものの、ドナルド・トランプ大統領の新設した「政府効率化省(DOGE)」のトップに就任した日以降、株価は約40%も暴落した。それでも、マスクの資産は1年前より1470億ドルも増えている。（編集部註：トランプ政権は5月末、マスクが米政府特別職員を退任すると発表した）
2｜マーク・ザッカーバーグ
1：2160億ドル 2：メタ(旧フェイスブック)共同創業者 3：米国
メタの株価は、人工知能(AI)への積極的な投資とその優位性を追い風にこの1年間で25%近く急騰。その結果、同社のCEOを務めるザッカーバーグが初めて世界第2位の富豪となった。急なトランプ寄りの姿勢も驚きを呼んでいる。1月初旬に格闘技団体UFCのCEOで、親トランプ派のダナ・ホワイトを自社の取締役に選任している。
3｜ジェフ・ベゾス
1：2150億ドル 2：アマゾン・ドット・コム創業者 3：米国
昨年よりも資産を210億ドルも増やし、投資家として多忙な日々を送っているベゾス。この1年間で50億ドル相当のアマゾン株を売却して、AIロボティクス企業などに出資している。だが、彼が立ち上げた宇宙開発企業ブルーオリジンは、ロケットの打ち上げに成功したにもかかわらず、2月には従業員の10%の解雇を発表している。
4｜ラリー・エリソン
1：1920億ドル 2：オラクル共同 創業者兼CTO 3：米国
エリソンの資産は、自身が創業したオラクルの株価が40%上昇したため、2024年と比べて510億ドルも増加した。大統領就任式の翌日、トランプ大統領がデータセンターを含むAIインフラ構築のための5000億ドル規模の構想を発表した際、エリソンは協力者の一人として紹介された。この構想には、オラクルも一部出資している。
5｜ベルナール・アルノーとその家族
1：1780億ドル 2：モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンCEO 3：フランス
2024年は世界一の富豪であったアルノー(76)だが、550億ドルもの資産を減少させた。彼が率いるラグジュアリーブランド大手モエ へネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が「困難な経済および地政学的な環境」で苦戦していることによる。5人の子供たちはいずれもLVMHの幹部を務めており、誰が後継者におさまるか注目を集めている。
6｜ウォーレン・バフェット
1：1540億ドル 2：バークシャー・ ハサウェイCEO 3：米国
バークシャー・ハサウェイの帳簿上に3340億ドルの現金をためているバフェット(94)。2024年には1340億ドル相当の株式を売却しており、22年に115億ドルで保険会社アレゲニーを買収して以来、目立った大型買収をしていない。今年の2月には、株主向け年次書簡に「魅力的に思える案件はそんなにはないものだ」と書いている。（編集部註：バフェットは5月上旬、2025年末に同社CEOから退任すると発表した）
7｜ラリー・ペイジ
1：1440億ドル 2：アルファベット (グーグル)共同創業者 3：米国
8｜サーゲイ・ブリン
1：1380億ドル 2：アルファベット (グーグル)共同創業者 3：米国
アルファベット(グーグルの親会社)共同創業者兼取締役のラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンは、前者が2019年に同社CEO職を、後者は同社の社長職を退任したが、現在も取締役および支配株主にとどまっている。そのため、二人とも同社の株価が30%近く急騰したことに伴い資産を増やしている。報道によれば、ブリンはグーグル社に出社して同社の大規模言語モデル「Gemini(ジェミニ)」の開発に関わっているようだ。その一方で、ブリンは自身のハイテク飛行船プロジェクトの「Lighter than Air Research(LTAリサーチ)」に2億5000万ドルを出資し、ペイジも製造業にAIを応用するための新しい会社の立ち上げに取り組むなど、アルファベット以外の活動も活発化している。
9｜アマンシオ・オルテガ
1：1240億ドル 2：ZARA(ザラ) 共同創業者 3：スペイン
ZARAなどを傘下に置くファッション小売り大手インディテックスを1985年に創業したオルテガ。同社の株価が過去12カ月間で27%も上昇したため、オルテガが保有する株式も過去最高の1000億ドルに達した。同社の会長職を14年前に退任した彼は、3月に発表された巨額の配当のおかげでさらに34億ドル(税引前)も資産に加えている。
10｜スティーブ・バルマー
1：1180億ドル 2：マイクロソフト前CEO 3：米国
マイクロソフトのCEOを2014年に退任したスティーブ・バルマー。彼が保有する株式ポートフォリオの約80%が同社株だが、退任以降、約1200%のリターンをもたらした。また14年に20億ドルで購入した米プロバスケットボールリーグNBAの「ロサンゼルス・クリッパーズ」は5番目に資産価値が高いチームで、その価値は55億ドルに達する。
