教育

2025.06.04 09:00

トランプの下で米国は「営利大学大国」に? 職業学校を支援、所得向上効果には疑問符

連邦助成金の一時停止や留学生受け入れ資格の取り消しなど、ハーバード大学への攻撃を強めるトランプ米大統領(Kayla Bartkowski /Getty Images)

連邦助成金の一時停止や留学生受け入れ資格の取り消しなど、ハーバード大学への攻撃を強めるトランプ米大統領(Kayla Bartkowski /Getty Images)

エリートの「Woke(ウォーク、意識の高い)」大学への攻撃を続けているドナルド・トランプ米大統領は5月26日、一時停止したハーバード大学向け連邦助成金の一部を職業学校(トレードスクール)に振り向ける可能性に言及した。トランプは、選挙戦でも第1期政権でも職業学校を支持していた。「非常に反ユダヤ主義的なハーバードから30億ドルの助成金を取り上げ、全米各地の職業学校に与えることを検討している」とトランプは自身のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿した。「米国にとって素晴らしい投資になるし、ひどく必要とされているものだ !!!」

もっともトランプには、この30億ドル(約4720億円)の振り向け先を独断で変更する法的権限はないようだ。この資金はもともと研究向けに連邦議会で承認されたものであり、職業学校向けに振り替えるかどうかもおそらく議会に委ねられる。しかし、こうした措置に対して彼が共和党の支持を得られる時があるとすれば、それは今かもしれない。ほとんどの職業学校は営利目的で運営されている。そして、職業学校を含む営利の高等教育セクターは、詐欺や制度悪用、その他の問題にまみれてきた過去がありながら、トランプと共和党支配の議会では繁栄する方向にあるように見える。

下院を通過したトランプ肝いりの税制・予算法案、正式名称「一つの壮麗な法案(One Big Beautiful Bill)」には、営利教育機関に有利な条項がいくつか含まれている。たとえば、一部の営利校に対して連邦学生ローンの利用を制限してきた規制の撤廃や、低所得層の学生が従来より短期間の職業訓練プログラムでもペル・グラント(返済不要の奨学金)を利用できるようにする「ワークフォース・ペル・グラント」制度の創設などだ。トランプはさらに、高等教育機関の認定プロセスの全面的な見直しも計画しており、これにより営利校は学生への連邦援助をより早く、容易に利用できるようになる可能性がある。

営利教育業界は米教育省内にも、これまでより自分たちに理解のある人物を持つことになりそうだ。トランプが高等教育担当の教育次官に指名したニコラス・ケントは、営利教育の業界団体キャリア・エデュケーション・カレッジズ・アンド・ユニバーシティーズ(CECU)の元最高政策責任者にしてロビイストなのだ(彼の指名は5月22日、共和党が上院の保健・教育・労働・年金委員会を賛成12・反対11の僅差で押し通し、現在は上院本会議での採決を待つ状態となっている)。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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