最大の輸出市場である米国による関税の影響を念頭に、日銀は2025年度の経済成長率の見通しを1.1%から0.5%に引き下げた。前回の「日本長者番付」作成時と比較して、ベンチマークである日経平均株価は2%近く下落したが、番付上位50人の資産総額は円高効果で14%増の2280億ドル(約33兆1000億円)となった。
首位 柳井正の総資産額は7兆円
番付全体を見ると、37人がこの1年間で資産を積み増した。その筆頭は、番付首位のファーストリテイリング代表取締役会長兼社長、柳井 正である。資産額は前年から100億ドル以上増え、過去最高の482億ドル(約7兆円)となった。
経営するファーストリテイリングの株価は前年比20%上昇。同社は2025年2月期上期の決算報告で売上高、純利益とも2桁の伸びを示した。北米市場での売上は全体の8%にすぎないが、関税の脅威を考慮し、成長見通しを下方修正している。
2位には前回に引き続き、ソフトバンクグループの創業者、孫 正義が入った。同社は3月期決算で年間純利益が1兆1533億円となり、4年ぶりの最終黒字を達成した。OpenAI、オラクル、MGXとの合弁で米国にAIデータセンターを建設する5000億ドル規模のスターゲート・プロジェクトをはじめ、AIへの大型投資を進めている。
また、東証プライム上場の情報通信会社、光通信の会長を務める重田康光は、初のトップ5入りを果たした。中小企業向けに電気・ガス事業も展開する同社の株価は、増収増益を受けてこの1年間で62%上昇し、重田の純資産を69億ドル(約1兆円)に押し上げた。
資産増加率が前年比で最も高かったのは、コナミグループ創業者で代表取締役会長の上月景正だ。資産額は35億ドル(約5080億円)へと倍増し、順位を9つ上げて17位に入った。リオネル・メッシをブランドアンバサダーに起用したサッカーゲーム「eFootball」は累計ダウンロード数が全世界で8.5億を突破。昨年10月に発売したホラーゲーム「SILENT HILL 2」も、全世界累計出荷本数が200万本を超えるヒットとなっている。
ALSO
日本長者番付 日本で最もリッチな人物は誰だ?
資産減は9人、関税や円高の影響受ける
資産額を減らしたのは9人で、これには半導体製造装置を手掛けるディスコの創業者一族、関家一家も含まれている。ディスコの株価が40%近く下落したことを受け、純資産は24億ドル(約3分の1)減少して50億ドル(約7260億円)となった。同社は、関税をめぐる懸念と円高の影響を受けた。
番付に返り咲いたのは3人で、ハローキティを看板キャラクターに擁するサンリオの創業者、辻信太郎もそのひとりだ。サンリオは、辻の孫である辻朋邦(36)の下で輝きを取り戻している。
番付から陥落したのは、看護・介護サービスを提供するアンビスホールディングスの創業者、柴原慶一を含む3人だ。アンビスの株価は、診療報酬の不正・過剰請求が行われていたとする報道を受けて80%急落。同社は今年3月、特別調査委員会を設置し、2025年9月期第2四半期(中間期)の決算発表を延期することを明らかにした。
番付50位の純資産額は、前年の9億8000万ドル(約1420億円)から12億ドル(約1740億円)に増加した。