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2025.06.02 13:00

「エッジAI」注目株、日本の半導体企業EdgeCortixが30億円を政府から調達

Shutterstock.com

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日本が国内の半導体エコシステムの構築に向けた取り組みを活発化させる中、東京に本社を置くチップ設計のスタートアップEdgeCortix(エッジコーティックス)が5月28日、日本の政府系機関から30億円の助成金を受けたと発表した。同社は、人工知能(AI)分野で急成長している、アプリケーションをクラウド上ではなくデバイス上で直接実行できる「エッジAI」向けチップの開発を推進する。

今回の資金は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるプロジェクト採択という形で提供されたもので、設立5年のエッジコーティックスの累計調達額は8600万ドル(約123億円。1ドル=143円換算)に達した。このうち4900万ドル(約70億円)が日本政府の支援による研究開発資金で、3700万ドル(約53億円)が株式による外部からの資金調達とされる。エッジコーティックスは、昨年11月にもNEDOの別のプログラムから40億円の助成金を受け取っていた。

同社は、過去3回の民間からの投資では2023年10月に2000万ドル(約29億円)を調達しており、これまでの調達ラウンドの投資家には、SBIインベストメントやMonozukuri Ventures、韓国のスタートアップアクセラレーターFuturePlay、車載用半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスが含まれている。ルネサスはエッジコーティックスの顧客でもある。

「エッジAI処理において特に重要なのは、現在主流のGPUなどと比較して、制約のある環境においてAI処理の電力効率が大幅に優れたシステムを構築することだ。それが、私たちがエッジAI分野の他プレイヤーと一線を画す点だ」と、エッジコーティックス創業者兼CEOのサキャシンガ・ダスグプタは述べている。

ダスグプタCEOはまた、同社がチップの設計技術でも強みを持っていると語る。エッジコーティックスが特許を取得しているアーキテクチャの「Dynamic Neural Accelerator」は、チップ内のプロセッサーを制御し、コンポーネント間の連携を柔軟に調整できる「AIコンピューティングの頭脳」ともいえるIPコアだ。このIPコアは、ニューラルプロセッシングユニット(NPU)といった機械学習向けプロセッサーと統合できる。

今回の助成金は、従来の一体型チップではなく、交換可能なコンポーネントを組み合わせる「チップレット」と呼ばれる方式での開発に充てられる。同社のエッジAI向けチップレット「NovaEdge」は、高性能な生成AIの推論およびオンデバイス学習を可能にするという。

2019年設立のエッジコーティックスは、自社で製造設備(ファブ)を持たない「ファブレス」半導体企業に位置づけられる。同社のNovaEdgeチップレットは、台湾積体電路製造(TSMC)の先端プロセス技術を用いて開発され、2027年の市場への投入を目指している。このチップレットは、TSMCの熊本工場での量産が計画されている。

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編集=上田裕資

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