AIチップを設計するエヌビディアは、最新の四半期決算報告で投資家に感銘を与え、一時、世界で最も価値のある企業の座を再び獲得した。
エヌビディアの株価は米国時間5月29日の取引で、一時5%高の141ドル台をつけ、2月18日以来の高値を更新した(日本版注:終値は前日比3.25%高の139.19ドルとなった)。
これにより、エヌビディアの時価総額も約1600億ドル(約23兆200億円)増の約3兆5000億ドル(約503兆円)となり、AI業界のリーダーとして、一時マイクロソフトを抜いて世界で最も価値のある企業の座を獲得した場面もあった。
ウィリアム・スタイン率いるTruistのアナリストたちは、顧客向けメモの中で、トランプ政権がエヌビディア製チップであるH20の中国への販売を禁止するという「大きなハードル」があったにもかかわらず、同社は「すばらしい業績」を達成したと説明した。
決算後のエヌビディア株の上昇は、トランプ大統領による強硬な関税措置が法的権限を逸脱しているとする、29日深夜に下された国際貿易裁判所の判決と相まって、株式市場全体の上昇へとつながった。関税が引き下がることで、多くの企業が収益面での恩恵を受けるとの期待からだ。
29日の取引では一時、S&P500種株価指数が約0.5%の上昇、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数が約1%上昇し、3カ月以上ぶりの高値をつける場面があった。
エヌビディアがこの日の取引だけで追加した時価総額1600億ドル(約23兆200億円)は、2019年末の時価総額である1440億ドル(約20兆7100億円)以上の数字である。
米中関係について、フアンCEOは難しい立場が続く
エヌビディアは29日、対中輸出規制による損失は前四半期で45億ドル(約6500億円)にのぼり、今四半期ではさらに80億ドル(約1兆1500億円)の損失を見込んでいると述べた。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは決算説明会で、中国への輸出規制に反対であることを明らかにした。「中国のAI業界は、米国のチップの有無にかかわらず、進歩を続けています」とフアンは説明し、「中国のチップメーカーを米国の競争から守ることは、米国外における中国企業の地位を強化し、逆に米国企業の立場を弱めるだけです」と付け加えた。しかし一方で、今月、トランプ大統領がアラブ首長国連邦へ訪問した際に同行したフアンは、トランプ大統領への信頼も表明しており、「(トランプ大統領には)ビジョンがあり、信頼している」と述べていた。
ステイシー・ラスゴン率いるバーンスタインのアナリストは、「中国の逆風は不快で、イライラさせられるものだ」「混乱した四半期であったが、そんな中でもエヌビディアは極めて好調だった」とコメントしている。
フォーブスによる最新の推定によると、29日の株価上昇でフアンは世界で10番目に裕福な人物となった。