これは真の緊急事態である。米国海軍は中国海軍に危険なほど後れを取っている。中国は海軍力をたゆまず増強してきた。その目的は複雑なものではない。世界の貿易を中国の「善意」に依存させることだ。
国際航路の航行の自由は、2世紀以上にわたって米国の政策の柱となってきた。だが中国は、海洋の自由を終わらせることを固く決意している。中国は南シナ海とその周辺に数多くの人工島を造成し、海上の軍事基地にしている。米国はそれを見過ごしてきた。中国は、自国の権利を主張する国際水域でフィリピンの漁船に威圧的な行動を繰り返している。インド太平洋諸国へのメッセージはこういうものだ。政治的にわが国に従いなさい。そうしなければ、貴国の経済的繁栄は深刻な危機にさらされるだろう──。
中国は現在、米国よりも多くの海軍艦艇を保有している。たしかに米国はなお質的には優位性を保っているものの、米国が迅速に、そして大胆に行動しなければ、それも長続きしまい。米国の軍艦建造はいまや見る影もなく、商船建造も笑いたくなるほどお粗末なのが現状だ。中国の海軍や当局などの大型艦船数が700隻ほどに達するのに対して、米国海軍の艦艇数は300隻に満たない。中国の造船業は世界最大であり、2023年には1700隻を受注した。米国はいえば、わずか5隻というありさまだ。
米国で商船を建造するコストは、韓国や日本よりもおよそ5倍も高い。もっと深刻なのは、米国の技術が両国よりも遅れを取っていることと、必要な熟練労働者が不足していることだ。
韓国最大の造船会社はHD現代重工業である。同社は現在、韓国海軍向けに駆逐艦を建造しており、それは米国のイージス駆逐艦とよく似ている。それでいてコストは米国の半分足らずであり、建造期間もはるかに短い。この駆逐艦は実のところ米国製の部品や技術を満載している。現代重工業の幹部はウォールストリート・ジャーナル紙に「基本的に米国製の軍艦と言っていい」と語っている。
現代重工業はニュージーランドやフィリピン、ペルー向けの海軍艦艇も建造している。