トランプ米大統領が立ち上げたSNS、「トゥルースソーシャル」運営元のトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)は5月27日、新株および転換社債の発行を通じて約25億ドル(約3600億円。1ドル=144円換算)を調達すると発表した。トランプ政権が暗号資産の普及を後押しする中で、同社はこの資金をビットコインへの投資に充てる計画だ。
TMTGは27日の米証券取引委員会(SEC)への提出書類で、約15億ドル(約2160億円)相当の株式と約10億ドル(約1440億円)の転換社債を機関投資家向けに販売すると発表した。同社は、この資金を自社の財務資産としてのビットコイン購入に用い、暗号資産をバランスシートの中核に位置づけると述べている。この取引には約50の機関投資家が参加したが、その内訳は明らかにされていない。
私募形式で行われる新株の発行は1株あたり25.72ドル(約3704円)で実施され、この価格は27日正午時点の公開市場での価格の約23.58ドル(約3395円)を約8.7%上回る水準となっている。同社は、ビットコインの保管先に取引所のCrypto.comおよびデジタル資産プラットフォームのAnchorage Digital(アンカレッジデジタル)を利用するとしている。
トランプ政権は3月に、国家の経済戦略の一貫としてビットコインの戦略備蓄を立ち上げると発表していた。TMTGによるビットコインへの投資は、民間企業としての取り組みではあるものの、そのタイミングは政権の動きとの一致を感じさせる。
また、今回のTMTGの発表は、27日からラスベガスで開催される「ビットコイン2025」カンファレンスの開始とも重なった。このイベントには、副大統領のJD・バンスに加えてTMTG取締役のドナルド・トランプ・ジュニアやエリック・トランプらが登壇予定だ。
2021年初頭にトランプが1期目の政権を終えた直後に設立されたTMTGは、2024年3月に特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場しており、トゥルースソーシャルに加え、ストリーミングサービスのTruth+やフィンテックサービスのTruth.fiも運営している。株式と債券の発行で調達した資金でビットコインを購入する戦略は、マイクロストラテジーのマイケル・セイラー会長が構築した事業モデルに類似している。
TMTGのCEO、「ビットコインは金融の自由の頂点」と声明
トランプ大統領は、TMTG株式(希薄化前)の約52%にあたる1億1500万株を保有しており、その価値は直近で約27億ドル(約3888億円)相当とされる。この持ち株は、トランプ・ジュニアが受託者を務めるトランプ家の信託(トラスト)に保管されている。
TMTGのデヴィン・ヌネスCEOは27日の声明で「我々はビットコインを金融の自由の頂点にある存在と見ており、当社は今後、暗号資産を資産構成の重要な一部とする」と語り、この投資が「金融機関からのハラスメントや差別に対する防衛策にもなる」と主張した。
フォーブスは、トランプ大統領の保有資産を約52億ドル(約7488億円)と試算しており、その多くをTMTGの株式が占めていると推定している。TMTGは、約7億5900万ドル(約1093億円)の現金を保有しているものの、直近の四半期で報告した収益はわずか82万1000ドル(約1億1800万円)で、3170万ドル(約45億6500万円)の純損失と980万ドル(約14億1100万円)の債務を報告した。