一方、トランプ米大統領は25日、SNSに「私は常にプーチンと良い関係を維持してきたが、彼はどうなったのか。完全に狂ってしまった」と投稿した。ロシアとウクライナの停戦に向けた仲介がうまくいかないことへのいら立ちが感じられる。トランプ氏のロシア・ウクライナに対する関心は急速に低下していくだろう。来年秋の米中間選挙までに実績が欲しいトランプ氏は、次に朝鮮半島に目を向けるかもしれない。WSJが報じた在韓米軍削減案も、同軍撤退を求める金正恩総書記への手土産が欲しいトランプ氏に、側近たちが媚びた結果の産物だった可能性がある。
6月4日には誕生する韓国の新大統領はいきなり、「米朝国交正常化」と「米韓同盟再定義」という非常に困難な課題を突き付けられるだろう。そうなれば、トランプ関税どころの騒ぎではなくなる。
しかし、現代に生きる韓国の政治家は、「朴正煕の教訓」を忘れてしまったようだ。韓国は50年前、同じような危機に立たされた。1975年4月のベトナム戦争終結に伴う南ベトナムの滅亡だ。朴正熙大統領は、米軍の南ベトナム撤退を決めた73年1月のパリ和平協定直後、「南ベトナムの余命はあと3年」と予言していた。
それでも、当時の韓国は非常に動揺した。1949年6月の米軍撤収から1年後に金日成率いる北朝鮮の南侵を許した記憶がよみがえったからだ。朴正煕政権は「自主国防」をうたい、学校では「南ベトナムは米国に頼り過ぎたから滅んだ」と教えた。もし、トランプ氏が「米韓同盟再定義」と「米朝国交正常化」を打ち出せば、50年前と同じ騒ぎになるのは想像に難くない。
李在明氏が本当に、日本を「重要な協力パートナー」と考えるのであれば、安全保障分野での協力にかじを切るべきだろう。「韓国の国民世論が心配だ」という気持ちはわかる。だが、「韓国独自の核武装」などという空論を振り回すより、日本と軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互支援協定(ACSA)を結んだ方が、ずっと現実的だし、国際的な理解も得られる。
ベトナム戦争から半世紀が経ち、韓国の人々にとって「韓米同盟」は空気のような「あって当たり前の存在」になってしまったのかもしれない。西欧ではよく同盟を「組合のようなもの」に例えるという。条件や状況に応じてどんどん姿を変えていく。韓国はこのままいけば、もしかすると「ゆでガエル」になってしまうかもしれない。