気候・環境

2025.05.26 11:00

発泡プラスチック廃止に向けた動きが全米で活発化 米国で再利用される割合は1%未満

Shutterstock.com

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海洋と人間を守るために、発泡プラスチックの使用を段階的に廃止すべきだとの報告書が米国で発表された。

米海洋保護団体オセアナは、発泡スチロールなどの発泡プラスチックが「現代生活に常に存在する」ようになったと指摘した。世界中で毎年800万トンを超える発泡プラスチックが製造されており、河川や湖沼、海洋環境で「最も一般的に見られるプラスチック汚染のひとつ」になっている。だが、米国では再利用される発泡プラスチック廃棄物はわずか1%に満たず、ウミガメやアザラシ、海岸鳥類などの海洋生物にも影響を与えている。

報告書はまた、発泡プラスチックの製造は、工場の近くに住む住民の健康リスクも高めているとしている。米小児科学会は、発泡プラスチックを含むポリスチレン製のプラスチック製品を子どもに与えないよう勧告している。さらに懸念されるのは、脳や血液、肺、腎臓など、人間の体内からポリスチレンマイクロプラスチックの小さな破片が検出されたことだ。

オセアナのクリスティー・リービットは筆者の取材に対し、「食器であろうと包装であろうと、使い捨て発泡プラスチックを使い続ける理由はない。再利用可能な代替品はたくさんある」と指摘し、発泡プラスチック廃止の必要性を訴えた。「この報告書は、発泡プラスチックの問題点と、それがなぜ海洋や私たちの健康に有害なのかを明らかにすることを目的としている。発泡プラスチックは安全ではなく、事実上リサイクル不可能な不要なもので、段階的に廃止していく必要がある」。

米国では、カリフォルニア州、コロラド州、デラウェア州、メーン州、メリーランド州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州、バージニア州、ワシントン州の12州に加え、コロンビア特別区が発泡プラスチックを削減する法律をすでに可決している。自治体レベルでも、250以上の市や郡が発泡プラスチックの使用制限を決めているという。

オセアナが行った世論調査では、回答者の78%が使い捨て発泡プラスチックを削減する米政府の政策を支持していたことが示された。州や自治体レベルの政策を支持する回答者は80%に上った。

米国のクリス・ファンホーレン上院議員とロイド・ドゲット下院議員は先ごろ、全米の使い捨て発泡プラスチック製品を対象とした「発泡プラスチック決別法」と呼ばれる法案を再提出した。同法案は、使い捨ての発泡プラスチック製食器、梱包材、保温材の使用を2028年までに段階的に廃止するもの。

発泡プラスチック製食器の廃止を長年訴えてきた米オーシャン・コンサーバンシーのアニャ・ブランドン博士は、州や地方自治体がすでに行動を起こしているものの、「私たちの環境を汚染している使い捨てプラスチックの洪水」に対処するには、断片的な取り組みでは不十分だと指摘した。

オセアナの報告書について、英環境保護団体プリベンテッド・オーシャン・プラスチックのラフィ・シーア会長は、すべてのプラスチックが同じではないことを示すものだと評価。発泡プラスチックの梱包材はリサイクル素材に置き換えるべきだとした上で、次のように結んだ。「発泡ポリスチレンは回収と再利用が著しく困難であることが判明しており、実際、報告書にあるように、最も一般的な海洋プラスチック汚染の原因となっている。プロのリサイクル業者として、この分野の代表者として、そして現場で問題の規模を目の当たりにしてきた人間として、私は、消費者がより良い選択肢を与えられるべきだと考えている。持ち帰り容器が再生材で作られた包装に切り替われば、世界的に大きな変化が生まれるだろう」。

forbes.com 原文) 

翻訳・編集=安藤清香

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