教育

2025.06.06 15:15

成績選抜禁止、「国立オンリー」だった国スウェーデンに私立の無料人気チェーン校登場

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高校時代、交換留学でスウェーデンに学び、大学卒業後はスウェーデン大使館商務部勤務。その後、理想の子育てを求めて家族でスウェーデンに移住した久山葉子氏は、『スマホ脳』『多動脳』(ともにアンデシュ・ハンセン著、新潮社刊)をはじめ多くのベストセラー書籍の翻訳者として知られるほか、著書『スウェーデンの保育園に待機児童はいない』(東京創元社刊)』 のあるエッセイストでもある。

また、教育分野ではスウェーデンの高校で11年日本語を教えながら、ストックホルム大学で「教師としてすでに勤務している人」向けの教職取得コースに通った経験もある。

久山氏に、きわめてユニークなスウェーデンの教育について以下、寄稿していただいた。


スウェーデンの学校には修学旅行がない

スウェーデンは社会民主労働者党という中道左派の党が長く政権を握り、福祉大国を築き上げた。申し込んでから4カ月以内に保育園に入れる、大学が無料といった点は日本と比べても手厚い福祉だといえる。

では義務教育はどうだろうか。学費という点では公立なら日本も無料だが、スウェーデンでは給食費の徴収もなく、学校で備品を買わされるということは一切ない。家庭格差が出ないように修学旅行などもなく、スクールトリップに行くとしたらクラスで1年かけて子どもたちが物を売ったりしてお金を集めた上で実行される。実際にスウェーデンで子育てをしてみて、他にも日本とは教育の概念が大きく異なっていることに気づいた。

スウェーデンでは1980年の教育指導要綱から「En skola för alla(全員のための学校)」というスローガンが導入され、「どの町の、どの学校の、どのクラスに行ってもまったく同じクオリティの高い教育が受けられる」というのを理想としてきた。当時の学校はほぼすべて国立で、国が一貫して教育の品質を管理していた。逆に言うと、割り当てられた校区の学校に通うという選択肢しかなかった。

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文=久山葉子 編集=石井節子

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