華やかなデザインのイメージが強いフランク ミュラーだが、あくまでもプロダクトファーストの姿勢は崩さない。それは同社が“夢のような時計”を目指し続けるという哲学をもっているからだ。
しかしその一方で、フランク ミュラーの大切な美学である、流れる時を楽しむという点においては、ジャンルを拡大している。そのひとつが「フランク ミュラー・エテルニタス タワー」というドバイでの不動産プロジェクト。UAEの高級不動産開発会社であるロンドンゲートと組んだレジデンスは、高さ450m、106階建てとなり、その屋上部には巨大なフランク ミュラーの時計が設置される。またレジデンス内の施設もフランク ミュラーの世界観で統一されている。日本における個人宅のプロデュースに続く新しいビジネスだが、これも流れ去る時間を楽しみ、ユーザーに対して夢のようなひと時を提供するという、時計と共通する一貫性のあるテーマから生まれたものだ。

「私がフランク・ミュラー氏と出会ったように、人生は出会いとチャンスの連続でもある。このプロジェクトもまた、そういった新しい出会いから生まれたものだが、内容を吟味し、チャレンジする価値があると判断しました。ビジネスとはその分野を探求することですから」
時間とは何かという真理を追いかけ、さまざまな機構を開発してきたフランク ミュラーは、その範囲を時計以外にも広げながら成長する。硬直した時代では、こういった自由さが魅力的に見えてくる。
ラウンド グランド セントラル トゥールビヨン

端正なラウンドウォッチの中心にトゥールビヨン機構を搭載。時分針はあえて小さく設計し、トゥールビヨンの周囲を回る。さらに60秒で一周するキャリッジを秒針として使用する。正確に時を刻む時計だが、機構やダイヤルの巧みな表現が際立っている。機械芸術と呼ぶべき作品だが、約84時間というロングパワーリザーブを実現し、マイクロローターによってケース厚を抑えた。
ヴァルタン シルマケス◎フランク ミュラー ウォッチランド創業者。1956年、トルコのイスタンブール出身。スイスに移住し、宝飾職人を経て、少数生産の時計ケース工房を立ち上げる。顧客であったフランク ミュラーと1991年にテクノウォッチ社を設立。1992年に時計ブランド「フランク ミュラー」を始動する。