2025年5月23日発売のForbes JAPAN7月号は「ビリオネアランキング2025 マスク、トランプの恩恵を受けたのは誰か?」と「未来は買える」を特集。毎年恒例のビリオネア特集で掲載する成功者の多くは、資産をもっていない時から、未来を買うために動いている。何を買うかにその人の理想が詰まっていて、それを実現するために、仲間や情報、お金を集めていく。では、人や企業はどんな理想を描いて、何を買うのか。その「買いもの例」から成功の道を探る。
イーロン・マスクは今年、ビリオネアランキングの首位に返り咲いただけでなく、史上初めて3000億ドルを超える資産をもつビリオネアとなった。初期の従業員や投資家など、彼の周囲で最も恩恵を受けたのは誰なのだろうか。
イーロン・マスクが巨額の富を築き上げたのは、技術革新と企業戦略によるものだ。しかし、彼ひとりで成し遂げたわけではない。弟は常にそばにいたし、初期の従業員たちは昼夜を問わず働き、投資家たちは何度も彼を支援してきた。そして彼は、その多くに数億、あるいは数十億ドルもの富で報いている。
スペースXの社長グウィン・ショットウェルや、マスクの弟のキンバルなどは、イーロンのおかげで全財産を築いた。キンバルは「兄には毎日感謝している」と今年1月にX(旧Twitter)に投稿している。ほかの人々はもともと裕福だったが、イーロンによってさらに豊かになった。
「彼は地球上で最も優秀な男であり、最も優秀なエンジニアだ」
そう語るのは、2014年にマスクを支援した投資家でビリオネアのロン・バロンだ。今年82歳になる彼は、自身の投資会社と個人的な投資を通じてテスラ株450万株を平均1株あたり12ドルで取得して、実に22倍ものリターンをえた。相変わらず強気で、今のところ個人的なもち株は売却しないと明言している(トランプ大統領の就任後、テスラ株は40%近く下落中)。
「多くの人がマスクの評判は修復不可能だと言うが、私は何もかも過ぎ去っていくと思っている。すべて吹き飛んだとしても、人々は彼の製品を買うだろう」(バロン)
イーロンが富を築かせなかった人物が2人いる。彼の元妻たちだ。5人の子どもをもつカナダ人作家、最初の妻であるジャスティン・マスクは、10年に離婚する際、テスラ株の10%、スペースX株の5%、600万ドル、そして氷河のような青いテスラ・ロードスターを要求した。それが通っていたら現在の資産価値は180億ドルとなり、地球上で113番目の富豪となっていただろう。しかしイーロンによると、彼女が受け取ったのは2000万ドルで、うち半分はロサンゼルスの自宅の価値だった。10年から12年、13年から16年の2度結婚した2番目の妻で女優のタルラ・ライリーも同様の金額を受け取ったとみられる。