脱毛症や勃起不全治療薬などを販売するオンライン薬局「Hims & Hers(ヒムズ・アンド・ハーズ)」の共同創業者のアンドリュー・ダダム(36)は、同社の株価が好調な四半期決算と、人気の肥満症治療薬販売に向けた提携契約を受けて急騰したことで、ビリオネアの地位を獲得した。
サンフランシスコを拠点とするHims & Hersが5月6日に発表した第1四半期(1月〜3月)の売上高は、前年同期の2億7800万ドル(約403億円。1ドル=145円換算)から111%増の5億8600万ドル(約850億円)に急増し、純利益も1110万ドル(約16億円)から4950万ドル(約72億円)へと跳ね上がった。これを受けて同社の株価は急騰し、時価総額は8日に約120億ドルに到達した。
株価を押し上げたもうひとつの要因は、同社が4月29日にデンマークの製薬会社ノボノルディスクとの提携を発表したことだ。これにより、Hims & Hersはオンライン薬局を通じて、人気の肥満症治療薬「ウゴービ」(Wegovy)を販売できるようになった。この薬を販売できる遠隔医療企業は、現在のところ同社を含めてわずか3社のみとなっている(ノボノルディスクは、ウゴービのほかに2型糖尿病患者向けに開発されたオゼンピックも製造している)。
Hims & Hersの株価は、2月に米食品医薬品局(FDA)が同社のような企業がノボノルディスクの肥満症治療薬と類似した薬を製造・販売することを禁止したことで、大幅に下落していた。しかし、今回の提携の発表以降に73%上昇し、その下落から完全に回復した。これらの企業は、ウゴービに含まれる主要成分のセマグルチドの供給不足を受けて、一時的にこの薬剤の調合薬(コンパウンド版)の製造・販売を認められていた。
フォーブスは、2017年にHims & Hersを立ち上げたCEOのダダムの資産を11億ドル(約1595億円)と推定している。連続起業家である彼の資産のほぼすべてはHims & Hersの株式およびストックオプションで構成されている。ダダムは、これまでに約600万株分のストックオプションを行使し、約8000万ドル(約116億円)を得ているが、そのうちの半分以上は、同社が肥満症治療薬の販売を始めた2024年5月以降の売却によるものだ。