食&酒

2025.05.14 14:15

ワイン離れと逆行 成長するワインツーリズムで南アが目指す世界一の姿

ラグーンを望むテラスでのテイスティング(ベンゲラ・コーブ)

ラグーンを望むテラスでのテイスティング(ベンゲラ・コーブ)

国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の報告によると、2024年の世界のワイン消費量は前年比3.3%減少。消費は2018年から減少傾向にあり、昨年は1961年に次ぐ低水準となった。

一方で、「ワイン離れ」の潮流とは裏腹に、ワインツーリズム市場は成長が予測されている。フューチャー・マーケット・インサイツ(FMI)の報告では、2024年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は12.9%と見込まれ、ワイン業界においても「コト消費」へのシフトが進んでいる。こうしたグローバルトレンドを踏まえ、本記事では南アフリカのワインツーリズムを取り上げたい。

オーセンティックな体験と多様性で世界一を目指す

南アフリカの2023年のワイン生産量は、オーストラリアやアルゼンチンと並び世界第7位で、世界市場の約4%を占める。同国にはワイナリーが集中する23の「ワイン街道」があり、訪問先の選択肢も豊富だ。南アのワイナリーの約9割はテイスティングルームを備え、4割がレストランを運営している。

その約9割を占めるのが、年商5000万ランド(約4億円)以下の小規模ワイナリーであり、ワインツーリズム(テイスティング、レストラン、宿泊など)は売上の3分の1以上を構成している(I&M Futureneer Advisors調べ)。なかには、年商1000万ランド(約8000万円)以下のマイクロワイナリーも含まれ、大規模輸出が難しい生産者にとってワインツーリズムは重要な収益源となっている。

各ワイナリーの努力に加え、業界全体の活性化を促す支援団体の存在も欠かせない。「サウス・アフリカ・ワイン(SA Wine)」は、政策提言、広報、R&D、事業変革、人材育成などを通じて業界を支える非営利団体であり、ワインツーリズムにも注力している。担当マネージャーのマリサ・ニヴォットは、南アフリカを「世界で最もオーセンティックかつ多様性のあるワインツーリズムの旅先にする」という2030年ビジョンを掲げ、地域性や文化を反映した商品開発やストーリーテリングの支援を進めている。

「世界で最もオーセンティックかつ多様性のあるワインツーリズムの旅先に」
「世界で最もオーセンティックかつ多様性のあるワインツーリズムの旅先に」

ワインを育む土地とつながる、記憶に残る体験

このビジョンを一足早く体現し、世界的に評価されているのが、ケープタウンから約100キロのヘメル・エン・アード地区にあるワイナリー「クリエイション(Creation)」だ。「ヘメル・エン・アード」とはアフリカーンス語で「天と地」の意味で、美しい尾根の風景が広がるこの地には、現在17のワイナリーが軒を連ね、2019年にはユネスコのガストロノミー地区にも認定された。

クリエイションは2002年創業。スイス出身のジャン=クロード・マーティンと南ア出身のキャロリン夫妻が、かつて羊が放牧されていた未開拓地に可能性を見出し、ブドウの栽培を開始した。

クリエイションを創業したキャロリン&ジャン=クロード・マーティン夫妻
クリエイションを創業したキャロリン&ジャン=クロード・マーティン夫妻
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