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2025.05.14 18:15

カナダのサッカークラブで、先住民族との「共存」を訴えるユニフォームを企画

パシフィックFCの田代楽

パシフィックFCの田代楽

近年、スポーツチームが社会の課題解決に取り組む事例が増えている。

例えば、今年1月に米ロサンゼルス周辺で発生した山火事。東京23区の3分の1に匹敵する200平方キロメートルに被害をもたらしたこの火事に対し、ロサンゼルスに本拠地を置く12のスポーツチームが共同で支援物資を送り、日本円にして12億円を超える寄付を行った。

この活動には、大谷翔平が所属するドジャース(MLB/野球)や、八村塁が所属するレイカーズ(NBA/バスケットボール)に加え、前シーズンにギャラクシー(MLS/サッカー)でプレーした吉田麻也も参加。日本でも多くのメディアに取り上げられた。

こうした社会貢献活動はプロモーションと単純に同一視はできないものの、チームを支える人々との関係構築という点では重要な機会だ。また、課題をより多くの人に知ってもらうきっかけにもなる。それがスポーツチームの持つ力だ。

先住民族との「共存」を示すユニフォーム

2023年からカナダのプロサッカーリーグであるカナディアンプレミアリーグ(CPL)の「パシフィックFC」でプロモーションを担う田代楽は、異国の地で社会貢献に力を入れている日本人。Forbes JAPAN6月号の「NEXT 100」にも選出された。

田代が手掛けた施策で特に高い評価を受けたのが、先住民族迫害の歴史を踏まえて「共存」を目指すためのセカンドユニフォーム企画だ。

発端はパシフィックFCの本拠地ビクトリアで、先住民族を迫害してきた歴史を証明する遺骨が発掘されたこと。ジャスティン・トルドー首相(当時)が公式に反省のコメントを発表するなど、大きな社会問題となった。

これを受けてクラブは、先住民族との共存と支援の方針を打ち出し、先住民族の子どもたちが通う学校にサッカーグラウンドを寄付した。田代は次のアクションとして、ビクトリアが向き合っている課題と、それに対するクラブの姿勢をより広く知ってもらう方法を考えた。

「選手たちが毎試合着ているユニフォームは、世界に目を止めてもらう手段のひとつ。そこで、セカンドユニフォーム(アウェイなどで使用するもの)を通して発信しようと決めました」

デザイナーには先住民族にルーツを持つ人を起用し、彼らの象徴的な生き物である「鮭」をモチーフにしたデザインが完成。告知ビジュアルも、先住民族にルーツを持つ子どもたちをモデルにして撮影した。

結果、セカンドユニフォームは通常の3倍の量を完売。ビクトリアだけではなく世界中から注文が寄せられたという。売上の一部は先住民のコミュニティに寄付された。

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文=尾田健太郎 編集=田中友梨 撮影=小田光二

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