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2025.05.08 16:00

急成長AIエージェントの「デカゴン」、a16zら主導で新たに140億円調達を交渉中

Shutterstock.com

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企業の顧客サポート向け人工知能(AI)エージェントを提供するスタートアップのDecagon(デカゴン)が、評価額15億ドル(約2150億円)で新たに1億ドル(約140億円)の資金調達に向けた交渉を進めていることが、事情に詳しい5人の関係者の話で明るみに出た。

同社のシリーズCラウンドは、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)とアクセルが主導し、既存投資家も参加する見通しだと関係者4人が語った。創業から約2年の同社の年間経常収益(ARR)はすでに1000万ドル(約14億円)を突破する見通しだと2人の関係筋は述べている。別の関係者は、このラウンドがまだクローズしておらず、調達額は今後変更される可能性があると語った。

Decagonは、アプリの操作方法に関する質問に答えたり、払い戻し処理やサブスクリプションのキャンセル処理を行ったりするチャットボットやAIエージェントを開発している。Notion(ノーション)やBilt(ビルト)、Duolingo(デュオリンゴ)、Substack(サブスタック)、Rippling(リップリング)などが、同社のプロダクトを採用している

フォーブスは、Decagonが昨年10月にベインキャピタル・ベンチャーズ主導のシリーズBで6500万ドル(約93億3000万円)を評価額6億5000万ドル(約930億円)で調達したことを報じていた。今回の調達が実現すれば、Decagonの累計調達額は2億ドル(約290億円)に達することになる。

フォーブスの「AI 50」リストにも選出されたDecagonは、2023年に現在27歳のCEO、ジェシー・チャンとアシュウィン・スリーニヴァスが共同で設立した。2人は、会社設立前にAIがベストな選択肢となりうる課題を見つけるために、数十社にヒアリングを行ったという。

企業は顧客サポートを自動化することで、莫大な人件費を削減することが可能だ。たとえばクレジットカード会社のBiltは、Decagonの導入によりサポートチームをそれまでの数百人規模から65人に縮小したとフォーブスは昨年報じていた。

また、DecagonのAIエージェントを年間250万件の顧客対応に導入したフィットネス企業ClassPass(クラスパス)は、1件あたりの予約コストを95%削減したと、ニュースサイトThe Informationは伝えている。チャンは3月のフォーブスの取材に、「AIエージェントは人間の社員の10人分の働きをする」と語っていた。

Decagonのエージェントは、OpenAIやAnthropic(アンソロピック)、Cohere(コヒア)の最新モデルを基盤としており、同社が社内で保管しているブログやマニュアル、過去のカスタマーサポートのやり取りなどのデータで訓練されている。Decagonは、今年2月に音声生成スタートアップのElevenLabs(イレブンラボ)と提携し、より自然で人間らしい会話を可能にする音声エージェントの開発も開始した。

競合は評価額45億ドルのSierra

顧客サービス向けのソフトウェア市場は競争が激しいことで知られており、Decagonの競合としては、元セールスフォースの共同CEOでOpenAIの取締役会会長でもあるブレット・テイラーが率いる評価額45億ドル(約6450億円)のスタートアップ、Sierra(シエラ)などが挙げられる。この分野の顧客企業は、複数のAIツールを実際に試して性能を比較する「ベイクオフ」と呼ばれる手法を頻繁に用いている。

今回、Decagonの資金調達の交渉に関わるある投資家は、「Decagonは、Sierraとの性能の対決でほぼ毎回勝っていると主張している。最終的には両社とも同じような製品にたどり着くだろう。あとは、誰がより高い精度でより多くのサポート案件を処理できるかの競争になる」と語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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