経営・戦略

2025.05.07 15:00

米最大手フードデリバリー「DoorDash」、5200億円で英同業者に買収提案

Sundry Photography / Shutterstock.com

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サンフランシスコに本拠を置くフードデリバリー大手のDoorDash(ドアダッシュ)は、欧州と中東での事業拡大を目的に、同業のDeliveroo(デリバルー)に対し36億ドル(約5150億円)で買収提案を行った。

ロンドンを本拠地とするデリバルーは、4月25日にロンドン証券取引所に提出した書類の中で、ドアダッシュから1株当たり1.8ポンドでの全額キャッシュによる買収提案を受けたことを明らかにした。デリバルーの発行済み株式数15億株を基にしたドアダッシュからの買収提案の評価額は約36億ドル(約5150億円)で、25日の終値に対して約23%のプレミアムを上乗せした金額となる。

ドアダッシュは英国の企業買収ルールに基づき、5月23日までに正式な買収提案を行う必要がある。また、ディールを完了するためには、規制当局の承認を取得しなければならない。

2013年に設立されたデリバルーは、ベルギーやフランス、イタリア、アイルランド、クウェート、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、英国で事業を展開しているが、4月に香港から撤退している。同社は、最近提出した書類の中で、現在18万6000の飲食店や小売パートナーと提携しており、配達員は13万5000人に達すると述べていた。

一方、ドアダッシュは30ヵ国以上で事業展開をしているが、同社の共同創業者でCEOのトニー・シューは、昨年2月のブルームバーグのインタビューで、「海外での認知度とエンゲージメントが米国と同水準に達していない」と述べていた。ドアダッシュは海外事業を強化するため、2022年にフィンランドのフードデリバリー企業Wolt(ウォルト)を株式交換により約80億ドル(約1兆1400億円)で買収した。現在、Woltは欧州とアジアでドアダッシュのサブブランドとして事業を継続している。

ドアダッシュは、2024年半ばにデリバルーと買収交渉をしていると報じられたが、両社は評価額で合意に至らなかった。

デリバルーは、2021年3月にロンドン証券取引所に上場し、時価総額が104億ドル(約1兆4900億円)に達したが、株価はそれ以来約62%下落している。同社は先月の決算発表において、「消費者を取り巻く環境は不透明」としながらも、初の年間黒字を計上した。2024年の売上高は20億7000万ポンド(約3940億円)、利益は290万ポンド(約5億5200万円)だった。

今年2月には、デリバルーの取締役会が創業者でCEOのウィリアム・シューの後任を検討しているとの報道が流れたが、同社はこの報道を否定していた。

「逆張り戦略」でウーバーイーツに勝利

2013年に設立されたドアダッシュは、2020年のIPO(新規株式公開)で大きな注目を集めていた。これにより、トニー・シューと共同創業者のアンディ・ファン及びスタンリー・タンはビリオネアとなった。最も多くの株式を保有しているトニー・シューの保有資産をフォーブスは23億ドル(約3290億円)と推定している。ファンとタンの資産は、それぞれ15億ドル(約2150億円)と10億ドル(約1430億円)と推定されている。

ライバルのUberEats(ウーバーイーツ)とGrubHub(グラブハブ)は、沿岸部にある都市部の独立系レストランに焦点を当てた。それに対しトニー・シューは、郊外やチェーンレストランをターゲットにするなどの逆張り戦略によって、ドアダッシュを米国でトップのフードデリバリー企業に育てあげた。

同社は最近、月間アクティブユーザー数が過去最高の4200万人に達し、2024年の売上高が107億ドル(約1兆5300億円)に拡大したと発表した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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