太陽系からわずか約300光年と非常に近距離にある巨大な分子雲を、米ラトガース大学などの科学者チームが発見した。もし地球から可視光で見えるとすると、夜空で満月40個分ほどの大きさに広がって見えるこの巨大分子雲は、恒星や惑星の基本的な材料物質となる水素分子で主に構成されており、地球に脅威を及ぼすことはない。太陽系に非常に近いため、今回の発見は恒星や惑星の形成の初期段階をより詳細に調査する助けになる可能性がある。
重要な事実
「エオス(Eos)」と命名されたこの巨大な水素分子雲は、クロワッサンのような形状をしており、単一の構造としては全天で最大級の1つであり、これまで検出された中で太陽と地球に最も近いものの1つだ。
分子雲は、新たな恒星や惑星を形成する材料になるガスや塵(固体微粒子)が濃く集まった領域だ。エオスは、宇宙で最も豊富に存在する分子で、恒星や惑星の形成に不可欠である水素分子で主に構成されているため、その内部では現在も星形成が進行中の可能性がある。
また、研究チームのモデル計算によると、太陽の約3400倍の質量を持つエオスは、600万年以内に散逸するという。

なぜエオスはこれほど長い間見つからなかったのか
エオスが今に至るまで見過ごされていた理由は、水素分子の検出の難しさにある。分子雲の大半には水素分子以外に一酸化炭素(CO)などの他の分子が含まれているため、従来はCOをトレーサー(追跡物質)として電波や赤外で観測することで分子雲を検出していた。だが今回の研究では、2003年に打ち上げられた韓国の紫外線宇宙望遠鏡STSAT-1(Science and Technology Satellite-1)で収集したデータの遠紫外(FUV)スペクトルで、エオスの仄かな輝きを確認した。エオスの発見は、遠紫外域の光で分子雲が検出された初の事例となる。
学術誌Nature Astronomyに28日付で掲載された今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、ラトガース大芸術科学部物理天文学科の准教授を務めるブレイクスリー・バークハートは「これにより、分子宇宙研究の新たな可能性が開かれる」と指摘している。「遠紫外域の蛍光で輝く水素分子が検出されたことを、今回のデータは示していた。この雲は文字通り暗闇で輝いているのだ」と、バークハートは続けている。