諸外国にくらべて環境保全の意識が希薄だと言われる日本の消費者だが、プラスチックトレイの回収やマイバッグの使用など、それなりに頑張ってはいる。企業が実施するさまざまなサステナビリティーへの取り組みにも協力的だ。だが無条件に従っているわけではない。真面目な日本人は、大声をあげることはないが、そうした企業の取り組みを厳しい目で見ていることがわかった。
企業のサステナビリティー促進に関する調査やコンサルティングなどを提供するパイプラインは、20代から60代の男女1006人を対象に「企業のサステナビリティーへの取り組みに対する消費者の理解」に関する調査を行った。それによると、企業の取り組みの効果について疑問に感じたことがある人は約6割と多かった。

取り組みごとに尋ねると、よいと感じられる取り組みのトップは商品パッケージの簡略化で、およそ8割の人が支持している。環境によい素材による商品やサービスも、ほぼ同程度の支持を得ている。だが、レジ袋の有料化、ホテルなどのアメニティーの提供中止は支持者が半数を切った。もっとも支持が低いのが紙ストローだ。「とても良い」はわずか7.3パーセント。「良い」を含めても約35パーセントに留まる。理由はご案内のとおり、製品のクオリティーだ。スターバックスコーヒーは不評のあまり紙ストローの提供を取りやめている。

紙ストローは、トランプ米大統領が紙製ストローの調達と強制使用の廃止の大統領令(Executive Order 14208)に署名するほど世界的に大不評ということで極端な例だが、日本には利便性を我慢してまで環境保全に協力したくないと考える人が一定数いる。事実、サステナビリティーへの取り組みが理由で店やブランドの利用を避けた経験のある人は2割近くにのぼっている。

またこの取り組みに関して企業に重視してほしいことを尋ねると、1位が「実効性があるかどうか」、3位が「環境に本当に良いのか根拠が示されること」と環境重視の要求になっているが、2位は「利用者の利便性に配慮すること」だった。それとは別に「エコよりも優先してほしい」ことを尋ねたところ、安全性と安心感、商品の品質や使いやすさ、価格の安さなどがあげられた。

環境によい製品やサービスを利用したいが、我慢を強いられるのはゴメンだというのが一般的な認識だろう。贅沢なことを言っているようだが、ただワガママなだけではない。企業のサステナビリティーへの取り組みで好感が持てるものを聞くと、トップは「数字やデータで成果が示されている」ことだった。自分たちが協力するからにはキチンと結果を示してほしいということだ。それだけ真剣に環境問題を考えている証拠だ。
雰囲気だけの取り組みは、日本では一目で見抜かれるということだ。もしこの「贅沢」な日本人が納得する、環境保全に確実な効果があり、それでいて便利でスタイリッシュなジャパンクオリティーのサステナブル製品やサービスが提供できたなら、その動きは世界中に広がるに違いない。