起業家

2025.04.26 10:30

いま困っている子を救う、元教員起業家 三原菜央の挑戦

三原菜央 スマイルバトン代表取締役 / NPO法人スマイルバトン代表理事

三原が「先生の学校」を始めたのは、「先生の支援を通じて、子どもたちの教育環境を良くしたい」という思いからだ。しかし、全国の学校で話を聞くなかで、気づかされたのが不登校の問題とその根深さだった。三原自身も6歳と2歳の息子を育てる親であり、「子どもが『学校に行きたくない』『生きづらい』と思ってしまう状況はおかしい」と、自ら学校を立ち上げることにした。

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「学藝の森CoE」は、小学1年生から4年生を対象に、16人の児童を受け入れるところからスタート。公立学校に通うのと同水準の負担で済むよう、利用料は給食費を含めて月額1万3300円に設定した。3人の先生と、地域のボランティアスタッフを中心に運営する。先生を3人にしたのは、児童それぞれのもつ特性をふまえ、一人ひとりと丁寧に向き合えるようにするためだ。CoEという学校名には、子どもや保護者などの声を聞きながら、より良い場をつくっていくという意味が込められている。

「不登校児童の多くは、その子のもつ特性が、既存の学校という環境に合っていないだけ。どういう仕組みであれば子どもが活躍できるかを考えながら、体制やシステムを整えています」

まずは岐阜で1校目を立ち上げ、3年後には10拠点の開校を目指す。そしてCoEで培ったノウハウをオープンソース化することで、広くかかわる人を増やし、全国へと展開させていく構想だ。「先生の学校」を通じて生まれたつながりが、今後、鍵になっていく。それは、「『先生の学校』には、先生に限らず、教育に思いをもつ方々も大勢いるからです。ある自治体で学校教育に携わっている会員の方から『自分たちもやりたい』と声をかけてもらいました。化学反応が起き始めています」。

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CoEと同施設で民間学童保育や職業体験スクールを開校し、利益を運営に充てるなどして財源を確保。企業からの賛同・寄付集めも行い、企業が不登校児童向けの学校を設立する未来図も描いている。

「先生の学校」での記事をまとめた雑誌『HOPE』。
「先生の学校」での記事をまとめた雑誌『HOPE』。

スマイルバトンのミッション「いい転機、つくろう。」の一文の前には「今も未来もスマイルであふれるように」という言葉がある。三原が起こす行動が周囲を巻き込み、その転機は子どもたちの生きた教育につながる。「目の前のことに一生懸命取り組んでいたら、ミッションに出合ったような感覚なんです。子どもたちが思わず笑顔になれる社会を目指して、どんなことでもやっていきたい」。三原のその姿勢からは「一歩からしか始まらない。踏み出したら景色は必ず変わる」という彼女の信条を見ることができる。


みはら・なお◎スマイルバトン代表取締役・クリエイティブディレクター、NPO法人スマイルバトン代表理事。大学卒業後、専門学校・大学の教員、リクルートライフスタイルなどを経て、2020年3月スマイルバトン創業。24年10月NPO法人スマイルバトン設立。

文=加藤智朗 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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