2025 年4月24日発売の「Forbes JAPAN」6月号では、「多彩な新・起業家たち100人」にフォーカスした企画「NEXT 100」を特集。地球規模から社会、地域まで多様化する課題に対して、アントレプレナーシップをもち、「自分たちのあり方」と「新手法」で挑む起業家やリーダーたちを「NEXT 100」と定義し、100人選出した。独自のスタイルや美意識で新たな価値指標をつくりながら、多くの人を巻き込み社会的・経済的インパクトを出している人こそ、世界の希望になる。次の時代をつくる「新しいクレイジーな人たち」に注目だ。
起業家・三原菜央が今、挑んでいるのがオルタナティブスクールの設立・運営だ。株式会社の本社・岐阜県岐阜市で、NPO法人を立ち上げたのは必然的な道だった。
「いい転機、つくろう。」
その言葉をミッションに掲げるスマイルバトン代表取締役・クリエイティブディレクター、NPO法人スマイルバトン代表理事の三原菜央。彼女のもとに今、転機が訪れている。NPO法人立ち上げから半年後の2025年4月、岐阜県岐阜市にオルタナティブスクール「学藝の森CoE(こえ)」を開校したのだ。

「教育は未来志向で話を進めることが多いが、むしろ今困っている子たちを救う必要があるのではないか」と三原は言う。
現在、全国の小学校、中学校で合わせて34万人以上の児童が不登校だ。コロナ禍前と比べておよそ2倍と、その数は急速に増加。この問題解決に向けて、文部科学省は23年3月、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を策定。不登校児童・生徒向けに配慮した教育カリキュラムを編成できる「学びの多様化学校」を、全国300校へと拡大する方針だ。一方、24年11月末時点、23自治体で35校の設置に過ぎない現実がある。
三原は、この社会問題となっている不登校児童の受け皿を目指してオルタナティブスクールを設立。特徴は「公立学校に近い経済負担で通える不登校児童・生徒向けの学びの場」である点だ。「1年前には、自分が学校を立ち上げるなんて思いもしなかった」──。「転機」というキーワードは、彼女の実体験が重なる。
子どものための「先生の学校」を起業
三原自身、大学卒業後8年間、専門学校・大学の教員を務めていた。しかし生徒の進路相談を受けるなかで、学校以外の「社会」を知らないことに問題意識をもつ。教員を辞めた三原は、ベンチャー企業2社を経てリクルートライフスタイルに入社。同社の「あなたはどうしたい?」と自律性を求められる企業カルチャーに、目を見開かされる。同社在籍中の16年9月、教育現場と社会の乖離を埋めようと、任意団体「先生の学校」を立ち上げた。その後の20年3月、スマイルバトンを創業し、「先生の学校」を教育メディアコミュニティにアップデートし、現場の最前線を知ることができるメディアやコミュニティを展開し始めた。現在、「先生の学校」には全国の小中高の先生をはじめ、1万2000人を超える会員がいる。
