テレビ番組から得たアイデアが、空前の大ヒット商品につながる

──「ひえーるタンブラー」の開発について教えてください。
開発のきっかけは、テレビ番組で大阪の高級すず製タンブラーを見たことです。価格が1万円以上もしており、「この高級感を、もっと手頃な価格で実現できないか?」と考えました。
アルミ素材は、すずと同じように熱伝導率が良いので、飲み物の温度をそのままタンブラーで感じることができるのではないかと思いました。
──アルミ素材を使うことで、どのような効果があるのでしょうか?
アルミは熱伝導率が非常に高いので、飲み物の温度がほぼそのままタンブラーの表面に伝わります。たとえば、冷たい飲み物を注ぐとタンブラー自体も冷たくなり、口当たりが非常に良くなるんです。
この感覚は、他の素材ではなかなか実現できません。さらに、アルミ素材は軽量で扱いやすく、日常使いに適している点も大きな魅力です。
──開発当初の販売状況はどうでしたか?
最初は苦戦しました。ですが、東急ハンズの「母の日企画」に持ち込んだところ、反響がありました。その後、ファミリーマートのチラシにも掲載され、少しずつ認知度が上がっていきました。
特に3年目、売れ行きが爆発的に伸び、会社全体の売上の約3割を占めるようになりました。その頃には口コミも広がり、販路がどんどん拡大していきました。
──売上が伸びた要因は?
商品の特性が口コミで広がったことが大きかったと思います。実際に使った方から「飲み物が最後まで冷たくておいしい」という感想をいただくことが多く、その声がさらに広がりました。
ただ、4年目になるといくつもの他社が似た商品を出してきたため、差別化が難しくなりました。そのため、最低限の生産に抑えて、一旦手を引くことにしました。それでも「藤田金属のタンブラー」という認知度は業界内では広まったと思います。
「お客さまのわがまま」をそのまま商品に落とし込む

──「フライパン物語」について教えてください。
これは営業活動をしている中での、「持ち手の素材にこだわりたい」というお客様の声がきっかけです。
プラスチック製の取手を提案すると、「木製の取手がいい」という意見や、金属製の取手を希望するお客様もいました。それなら、持ち手を選べるようにしようと思い、カスタマイズ形式のフライパンを考案しました。
取っ手、素材、サイズ、表面加工、持ち手、カラー、名入れ。「フライパン物語」の企画はスタートした時点では480通り、現在は1480通りにもなります。
──最初は法人向けだったのですか?
法人向けに提案していたのですが、あるメディアに取り上げられたことで個人からの問い合わせも増えました。それで、個人向けにも販売できるように商品化しました。
ただ、社内からは「480通りの組み合わせなんて受注したら、製造が追いつかない」と反発もありました。製造現場からは、「効率が悪い」という意見もありましたが、最終的にはこのカスタマイズ性が商品を差別化する大きなポイントになりました。
──受注数の増加に対して、どのように対応したのですか?
販売の幅を狭め、自社サイトとギフトカタログの2つの販路に絞りました。これにより、月に300〜500件ほどの受注があり、製造が追いつく範囲で対応できるようになりました。
また、名前を入れられるサービスも提供し、ギフト需要も取り込むことができました。その結果、法人だけでなく個人にも喜ばれる商品となりました。